| 2010年7月17日更新 2010年7月11日掲載 |
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第29話 パワーアンプ MAJIK5100 (C5100) |
1.ラインナップと技術と音質1972年、レコードプレーヤーLP12から始まったLINNは、幅広いラインナップを揃える総合オーディオメーカーに成長した。DSという先進的なミュージックプレーヤーもあれば、高性能プリアンプ、マルチチャンネルアンプもある。スピーカーはステレオ、サラウンドはもちろん、インウォールスピーカーまで揃っている。今もLP12は、象徴的かつ実用的な製品として製造が続けられている。豊富なラインナップ、それのみがLINNの取り柄ではない。 ぼくが一番気に入っている点は、音質改善のために技術を磨き、有効性が確認できた技術を製品に適用しているところである。技術用語を使ってユーザーをだまさない。LINNは自社製品に対して誠実であると同時に、ユーザーに対しても誠実な姿勢を貫いてきた。これがすばらしい。 さて、過去からのラインナップを見てみると、すでに生産の終了した製品もあるが、アンプの数は相当にあって、力を入れてきたことがうかがえる。 LK100(2CH)、KLOUT(2CH)、LK240(1CH)×2台は、ぼくが使用したことのあるパワーアンプである。現在は、スピーカーAKURATE242をアクティブ駆動するために、C5100というパワーアンプを使用して、計10チャンネルを動かしている。 そこで、今回は、C5100の特徴と長所を中心に、LINNのパワーアンプについて、思うところを述べる。 2.シリーズ名の統合現在、製品群は、主につぎのシリーズ名に統合され区分されている。KLIMAX(クライマックス) AKURATE(アキュレイト) MAJIK(マジック) 今回のテーマであるC5100は、MAJIK5100に名称変更され、LINNパワーアンプは、つぎのようにシリーズ化された。以下、C5100は、MAJIK5100と記述する。 KLIMAX SOLO KLIMAX CHAKRA TWIN AKURATE4200 AKURATE3100 AKURATE2100 MAJIK6100 MAJIK5100 MAJIK4100 MAJIK3100 MAJIK2100 KLIMAX SOLOおよびKLIMAX CHAKRA TWINは、アルミ合金削りだしのクライマックスシャーシに妥協なしの回路設計が施されたパワーアンプ。SOLO(ソロ)はモノラル、CHAKRA TWIN(チャクラ ツイン)はステレオを意味している。 AKURATEおよびMAJIKは、共通の筐体に用途に応じた回路が格納されたパワーアンプ。4桁の数字は、千の位がチャンネル数、百の位が最大出力数(4Ω)を表している。 3.色まずはじめにKLIMAXから。色は、シルバー。アルミ合金を削り、高硬度アルマイト処理がなされている。取扱説明書「Linn Klimax500 solo」によると、KLIMAXシャーシの表面は"金属素材の結晶構造"が見られ、1台ごとその風合いに違いがあるという。いかなる違いか。観察してみると、あることにはある。微細な凹凸があって、その密度に多い少ないがある。 この凹凸が光を乱反射して、いぶし銀のような風合いを醸しており、質感がすばらしい。もし、凹凸がいやであれば、鏡面仕上げをするしかないが、それは適切ではないだろう。風合いの違いは、小さな個性の演出であって、まったく問題でない。 アルマイト加工とは、希硫酸やシュウ酸(蓚酸)などの溶液の中に、電極を差し入れ、プラス側にアルミニウムをつなげることで、電気の力により、酸化アルミウムの皮膜が生じることを利用した加工方法である。アルマイト加工は一般に、アルミニウムの酸化や磨耗を防いだり、装飾したりするために用いられる。高硬度アルマイト処理は、特別な処理方法により、厚く硬い皮膜を得た加工である。 ということは、取扱説明書にある"金属素材の結晶構造"は、アルミ合金の無垢材を研磨したときの結晶構造のことを指しているのではなく、アルマイト加工したときの結晶構造のことをいっていることになる。 なお、2009年には、KLIMAX DS(ミュージックプレーヤー)、KONTROL SE(プリアンプ)、CHAKRA TWIN(パワーアンプ)の3機種にブラックバージョンが各30台限定で発売された。これは、1999年にKLIMAX SOLOが発売され、10周年記念によるものである。 さて、本題のAKURATEとMAJIKは、シルバーとブラックで共通デザイン。どちらも、品位があり、日本の住宅に馴染む色である。可能なら、シルバーかブラックでコンポの色を統一されるとよい。さらに美しい見栄えとなる。 4.外観および大きさ幅381ミリ×奥行き355ミリ×高さ80ミリ重さはつぎのとおり。MJIK2100と3100は、約5キログラム。MAJIK4100は、約6キログラム。MAJIK5100と6100は、約7キログラム。 外観と大きさは、AKURATE、MAJIKで共通化が図られており、ユーザー宅での設置のしやすさ、美観に資する。大型化していないことは、音質上のメリットもある。 4-1.他社製の「大きく重いパワーアンプ」の問題点今日でこそ、LINNやnu forceなどのメーカーから、音質のよい小型かつ軽量なパワーアンプが発売されているが、むかしは重いパワーアンプのほうが音質がよいといわれていたものである。それらは、重いだけでなく、サイズも大きい。 今もってそのようなパワーアンプが製造されているとしたら、メーカーの技術的センスを疑ってしまうが、仮に音がよかったとしても、よいオーディオ製品だということはできないのである。 「重くて大きいパワーアンプ」は、つぎのような問題を多々抱えている。 1.広いオーディオルームはだれでも確保できるわけではない。特に都市部は住宅難であって、家族が多ければ部屋を兼用するのがふつうである。コンポを無理して設置している家庭も少ないのである。 2.置き場所があったとしても、スピーカーの間に大きなアンプを置くと、乱反射で音質が悪化する原因となる。 3.ユーザーの選択肢はステレオ(2CH)のみ。マルチアンプシステムなど、はなから無理な話である。 4.さらに、A級動作回路を積んでいると発熱が問題となり、夏季などには快適性が失われる。 LINNのパワーアンプは、そのような問題は最少化している。安心して使用していただきたい。 5.チャンネル数に"遊び"を作らない単純なステレオ(2CH)で音楽を再生する場合は、AKURATE2200またはMAJIK2100を使用する。3100以上のパワーアンプをステレオで使用し、使わないチャンネルを残しておくこともできるが、音質上はおすすめしない。チャンネル数に合ったパワーアンプを選ぶことである。6.スイッチング電源現行ラインナップは、スイッチング電源を搭載している。LINNのスイッチング電源は、高音質化技術のひとつとして用いられており、音質的に多大な貢献をしているほか、低発熱、小型化を実現している。以前、CDプレーヤー、プリアンプに、ブリリアント電源というスイッチング電源が搭載されたとき、パワーアンプ(KLOUT、LK100など)にはまだスイッチング電源がなかった。パワーアンプに搭載できるスイッチング電源はできるのだろうか、そうしたらどのような音楽になるのだろうかと思い描いた日々が今では懐かしい。7.発熱および冷却装置パワーアンプは最も電力消費の激しいコンポである。特にA級動作回路のパワーアンプは、多くの電力を熱エネルギーに変えてしまい、ラジエターはやけどするほど高温になる。一方、LINNのパワーアンプの発熱は、実に少ない。CDプレーヤー(AKURATE CD)と変わらない感じだ。万一、温度上昇があると、冷却ファンが作動する。フロントパネルから外気を取り込んで、後方に排出する。ちなみに、夏のわが家の部屋は、エアコンの使用により28度程度になるが、ファンが動いたことはない。また部屋の温度を上昇させる要因になることは少ないため、快適に音楽鑑賞できる。 発熱が多量であることは、電気回路やパーツの劣化を早め、ついには製品寿命を縮めることにつながる。A級動作は高音質を実現する回路ではあるが、発熱に問題がある。LINNでは多分、これを理由に製品に採用していないのだと思う。A級動作に頼らず、回路技術で発熱を防止しながら、高音質を実現するところが、LINNのすぐれているところである。 8.電源スイッチおよびスタンバイ機能電源スイッチはリアパネルのほぼ中央にある。電源スイッチをオンにしていても音声信号を検知しない時間が約20分間続くと、スタンバイ状態となり、低消費電力の状態になる。音声信号を流せば、ただちに通常の動作に復帰する。わが家では休日などは電源スイッチを終日オンにしておくが、平日は聴き終わったら、電源スイッチをオフにしている。 9.加熱防止機能および過電流の防止機能オーバーヒートや過負荷状態になると、回路およびスピーカーを保護するため、電力供給が停止される。これらの原因が消滅すると、自動的に通常の状態に復帰する。LINNのパワーアンプは低発熱設計ではあるが、設置環境や使用状況によっては、温度上昇することもあるのかもしれない。ちなみに、わが家では、保護機能が作動した経験はない。 10.チャンネル間の接続方法スピーカーをアクティブ駆動した場合を想定して説明する。MAJIK5100では、5チャンネルの回路を持っている。プリアンプからの信号は、5チャンネルに対して、並列に接続しなくてもよい。つまり、プリアンプから1チャンネルの信号をMAJIK5100に伝送する。MAJIK5100において、数珠繋ぎのように直列に接続するのである。 この数珠繋ぎの方法には、ふたつの方法がある。ひとつは、筐体内部でジャンパー線(付属品)でつなぐ。もうひとつは、筐体の外部でピンケーブルでつなぐ方法である。 音質上のおすすめは、前者ジャンパー線での結線である。外部ピンケーブルの結線は、仮にどんなによいピンケーブルを使用したとしても、音質劣化を招く危険性が高い。チャンネル数が増えるほど、ジャンパー線により接続したほうが安全である。 なお、4チャンネル以上のパワーアンプは、筐体内にふたつの基盤に回路が分かれる。基盤同士をつなぐには、ジャンパー線ではなく、ピンケーブルを必要とする。 たとえば、4チャンネルであれば、2チャンネルと2チャンネルに、MAJIK5100のように、5チャンネルであれば、3チャンネルと2チャンネルに、そして6チャンネルであれば、3チャンネルと3チャンネルに分かれる。ジャンパー線の接続は、基盤内のチャンネルで可能である。 10-1.ツイーターから入れるか、ウーファーから入れるか数珠繋ぎの始点を高音域とするのか、低音域とするのかという意味である。どちらを始点にしても、音は出る。問題は、音質である。いまのところ、わが家では、上から入れている。 上から入れることがすべての環境において最善になる保証はない。ただ、理屈としては、ひずみに敏感な高音域を優先するほうが、純度の高い音質が得られるのではないかと考えている。結果、そうなっている。 これは、あまり難しさはないので、もしLINNのパワーアンプを買ったら、ユーザー宅においてぜひ試してみてほしい。 11.チャンネルのレベル調節チャンネルごとに出力レベルの調節が可能である。リアパネルに「GAIN」と書かれた箇所がある。通常はプラスチック製の黒いふたでかぶせてあり、引くとはずせる。目盛りは「0」から「7」まであり、「3」が標準値。マイナスドライバーで回す。わが家では、すべて「3」としている。 アクティブ駆動する場合は、つぎのようにレベル調節を考える。まず全チャンネルは標準値「3」とし、チャンネル間において凸凹を作らないようにする。この状態で、スピーカーの設置をきちんと行なう。高音域から低音域まで、バランスよく再生する設置位置を見つける。もしも、住宅の都合で、スピーカーを自由に設置できないときは、レベル調節でバランスを取る。 12.入力信号のインターフェース(RCA・XLR)MAJIK・AKURATEシリーズは、RCAケーブルまたはXLRケーブルが使用できる。購入時に選択することとなるが、本体はRCA仕様またはXLR仕様となり、1台に2つのインターフェースを混在させることはできない。どちらも価格は変わらない。RCAはアンバンス接続、XLRはバランス接続ともいう。なお、RCA仕様またはXLR仕様が存在することとなるが、その他の機能には変わりがない。 RCA・XLRは、どちらか一方の音質がよいというわけではない。XLRはプロの現場で使われており、ノイズの混入を防ぐから、音がよいと考えていたら、それは間違いである。 一例として、もし、XLRと3股ACプラグを同時に使用すると、日本住宅ではアースループを生じさせる危険性がある。ということは、RCA・XLRはアースといっしょに考えていかなければならないということである。もし、アースループさせてしまうと、コンポは性能を発揮できず、音質が曇り、響きがおかしくなる。 13.スピーカー端子つぎの3種類の端子を接続することができる。(1)4ミリのバナナプラグ (2)スペード端子(Y字) (3)裸線 14.アンプ選びのポイントアンプを選ぶときに注意しなければならない点は、ふつう3点ある。14−1 アンプの形式アンプの形式には、音量調節や入力装置の切り替えを行なう、プリアンプ(コントロールアンプ)、増幅を行なうパワーアンプ、そしてそのふたつが一体になったプリメインアンプ(インテグレーテッドアンプ)がある。このページで説明するMAJIK5100は、パワーアンプである。オーディオは高級化すると、機能を切り分けることがよくあり、プリアンプとパワーアンプもその例である。プリメインアンプは、一般に入門用に多いが、かさばらず、結線や電源取得などシンプルな点に長所がある。 なお、AVアンプやヘッドフォンアンプなどと呼ばれるアンプもあるが、ここで取上げるアンプとは機能や用途が異なる。AVアンプは映像信号の入出力やサラウンド機能などを有し、文字どおり、映画などを楽しむためのアンプである。ヘッドフォンアンプは、スピーカーではなく、ヘッドフォンを鳴らすためのアンプである。 14−2 最大出力最大出力は、ふつうはW(ワット)で表される。ホームユースでは、100Wもあれば十分。ただし、一般の製品には、20Wなどの小さなアンプもある。小型スピーカーを小さな空間で鳴らすためのアンプであり、広い部屋で鳴らすオーディオには向かない製品もあることを知っておく。最大出力の値は、スピーカーのインピーダンス(抵抗値)に影響を受ける。LINNのスピーカーは、8Ωまたは4Ω。インピーダンスが小さいほうが大きな出力を得られる。なお、コンポを比較検討するとき、アンプの最大出力が大きいから、音質もよいというわけではないので、注意する。 14−3 増幅技術ユーザーに最も関係すると思われるのが増幅技術で、その種類は、A級、B級(またはAB級。便宜上、AB級と記述する)またはD級などと呼ばれる。(C級はオーディオでは使われない)これはA級ゆえに上位というわけではなく、種別のことである。A級アンプは、高音質をねらって設計されるアンプに見受けられるが、消費電力が多く、発熱も著しい。LINNにはA級アンプはなく、現在のチャクラという増幅技術を用いたアンプは、AB級に属する。AB級は、一般のアンプに採用される技術であり、発熱が抑えられており、音質もよい。D級は、いわゆるデジタルアンプであり、消費電力や発熱がたいへん少なく、その音質は一般に元気がよい。小型軽量化できる長所がある。 15.増幅技術 チャクラ(CHAKRA)テクノロジーチャクラテクノロジーとは、LINNのパワーアンプまたはプリメインアンプのパワーアンプ部に使用されている増幅技術である。アンプには、トランジスタアンプと真空管アンプと呼ばれるものがある。LINNには真空管アンプはなく、すべてトランジスタアンプである。トランジスタにも種類があり、トランジスタの特性のひとつひとつが音質に影響を及ぼしている。 電子部品のひとつに、一枚の板に回路を設計し、一体成形してできあがるモリシリックICという部品がある。モリシリックICは回路を短かく作ることができ、その結果、信号の鮮度を保ち、かつ高速化に優れている。しかし、回路を集積化する影響で、高出力が制限されること、また高出力域でノイズを放出しやすいという短所があった。 もうひとつの電子部品は、通常のトランジスタで、高出力時の増幅に優れた性能を発揮することができる部品である。 そこで、小さな音も大きな音も、高い音も低い音も、どんな音も優れた音質で増幅するために、モリシリックICとトランジスタを組み合わせ、その両者の長所を活用しようということになった。これは、LINNの業務用モニタースピーカー328Aを駆動するアンプを製作するときの話だそうだ。 LINN JAPANサイトによると「モノリシックICとバイポーラ・トランジスタとの動作移行に関してユニークな動作設定に成功し、LINNは特許を出願しています。」とある。 両者の電子部品がスムーズに"バトンタッチ"して増幅を繰り替えしている。スイッチのようにある値でオン・オフするのではなく、両者の割合を変えながら、スムーズな切り替えを行っているのかもしれない。いずれにしても、切り替わりが音質上の違和感となることはない。 チャクラテクノロジーによってLINNのアンプでは、今までにない高音質、低消費電力、低発熱を実現した。確かにLINNのLKシリーズの音色と比べると、近年、"新しいLINN"に変化してきている。チャクラとよばれる増幅技術も、その流れのひとつである。 ちなみに、チャクラとは、サンスクリットの「車輪・円」という意味。サンスクリットとは、古代・中世のインド・東南アジアで使われていた公用語。この個性ある増幅技術の様子をたとえて用いられたようである。 16.音質LINNのパワーアンプは、音がよい。品質も安定している。システムを音質改善するためにぼくは試行錯誤を繰り返してきたが、パワーアンプ(MAJIK5100)はいついかなるときも捨てようと、考えたことはなかった。 一番の理由は、変える必要を感じなかったということだが、きちんというと、MAJIK5100に限らず、LINNのパワーアンプは、入力装置やソースを改善すると、よく応えてくれるのである。結果の良し悪しが素直に出てくる。もしも、変わるところがなかったら、パワーアンプのポテンシャルが浅いというべきである。そういうことがなかったのである。 MAJIK5100は、シンバル、ハイハットがリアル。 トランペットやサックスが吹き抜けて、気持ちがよい。 トライアングルは可憐。 バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスの描き分けが楽しい。 シンセサイザーは、わくわくする。 ピアノは、右手、左手が見えるよう。タッチと余韻の残響が正確。 ベースはリズムとメロディを追っていける。 ドラムスは、眠くなる・・・。退屈ではなく、音質を体で感じるからである。 低音域は、臨場感を醸し出している。 LINNのパワーアンプは、聴けば聴くほど、手に入れてよかったと思うアンプである。 外部リンクCHAKRA WHITE PAPER (LINN JAPAN)http://www.linn.jp/life/story/01.html |